大判例

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東京高等裁判所 平成8年(く)30号 決定

少年A

〔抄 録〕

記録によれば、原審では、審判期日が三回開かれたが、弁護士である本件附添人は、第二回審判期日の直前に選任され、第二回及び第三回の審判期日に出席し、右第三回期日の最終段階において、処遇につき意見を述べ、担当審判官は、附添人の右意見開陳後に、少年の処遇につき協議のためと述べて、少年、保護者(父母)及び附添人らに退席を命じ、在席させていた少年鑑別所の法務技官と家庭裁判所調査官から、それまでの審理の結果を踏まえた処遇意見を徴し、そのうえで少年、保護者(父母)、附添人らを再び入席させ、原決定をその面前で告知したことが、認められる。右第三回審判期日において、原審が、少年、保護者(父母)及び附添人を一時退席させたのは、審判に出席した調査官、法務技官の最終的な処遇意見を徴するについて、少年については、少年審判規則三一条二項にいう「情操を害するものと認める状況が生じた」と認め、保護者(父母)及び附添人については、同条一項にいう「適正な審判をするために必要がある」と認めたためと解されるが、少年の退席については了解できるとしても、保護者(父母)及び附添人の退席、特に附添人の退席について、同条一項に当たる場合であったか疑問であるといわなければならない。少年保護事件の審理に当たり、審判官が法務技官、家庭裁判所調査官などの意見を徴するについては、適宜の方法をとることができると解されるけれども、審判の席でこれらの者の意見を徴しようとするからには、同規則の手続に則って適式に行わなければならない。審判期日には、少年のほか保護者及び附添人を呼び出さなければならず(同規則二五条、なお、少年につき二八条三項)、審判の席から退席させる等の措置をとることのできる場合の要件が定められている(同規則三一条)のであるから、審判期日に出席している少年、その保護者及び附添人を退席させるには、相応の事由がなければならない。ところが、本件において、法務技官及び家庭裁判所調査官の意見を徴するについて、弁護士である附添人を退席させる必要があったと認めるべき事情は見出し難いのであって、原審の審判手続はこの点において少年審判規則に違反したといわなければならない。

しかしながら、審理を終えるにあたり、審判に出席している附添人、法務技官、家庭裁判所調査官らから徴する処遇意見の陳述の順番などは、審判官が裁量により決することが許される事柄であって、必ずしも附添人の意見を最後に徴しなければならないものではなく、まず附添人に意見を開陳させ、しかる後に法務技官、家庭裁判所調査官らの意見を徴することも、許容されるというべきである。したがって、本件第三回審判期日において、少年、保護者の取調べ、証人尋問、参考人の意見聴取等の審理がすべて終了した段階で、附添人がまず処遇意見を述べ、その後退席を命じられたために、引き続いて開陳された法務技官、家庭裁判所調査官の各意見の内容を知る機会がなかったからといって、附添人の審判の席における権能の行使が実質的に損なわれたとはいえないのであり、前記の審判手続の瑕疵は、決定に影響を及ぼすとはいえない。

(高木俊夫 岡村稔 長谷川憲一)

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